PCB腐食とヘッド吸着が発生したHDDの重度物理障害からデータを復旧する手順|基板処置と内部処置の実例【ST6000DM300】

復旧事例|(更新:

〖復旧事例〗PCB腐食とヘッド吸着が発生したHDDの重度物理障害からのデータ復旧

概要

今回対応したHDDは、基板(PCB)の腐食とヘッド吸着が同時に発生している重度物理障害の状態です。
通電が不安定で、通常の方法では認識できない状況からのご相談になります。

PCB洗浄、モーターコントローラーの処置、ヘッド吸着の解消を行い、読める範囲を複製して専用ツールで解析し、復旧可能なデータを確保する流れになります。

ご相談時の症状

HDDは接続してもスピンアップが安定せず、パソコン側で認識されない状態です。外観を確認すると、PCB全体に腐食が見られ、電源系・制御系の不良が疑われる状況です。

PCB腐食 箇所1
PCB上の腐食を確認
PCB腐食 箇所2
モーターコントローラー付近の腐食

診断内容と障害ポイント

  • PCB(基板)に複数箇所の腐食
  • モーターコントローラー周辺の導通不良
  • 内部ヘッドの吸着

PCB腐食により電源ラインが不安定な状態で、さらに内部ではヘッドがプラッターに吸着しています。
基板と内部機構の両方に影響が出る、典型的な重度物理障害のパターンです。

腐食状況の近接写真
腐食が広範囲に及ぶ状態

作業内容

1. PCBの腐食確認

はじめに、PCB全面の腐食状況を細かく確認し、動作に影響する範囲を特定します。モーターコントローラー周辺に強い腐食が見られます。

2. PCBの洗浄

腐食部分を丁寧に洗浄し、導通不良の要因を取り除きます。洗浄により基板表面が安定し、後の工程に進める状態になります。

PCB洗浄後1
洗浄後の基板(表面)
PCB洗浄後2
洗浄後の基板(別角度)

3. モーターコントローラーの取り外し

モーター制御が安定しないため、一度モーターコントローラーを取り外して状態を確認します。

取り外し後のPCB1
モーターコントローラー取り外し後(1)
取り外し後のPCB2
モーターコントローラー取り外し後(2)
モーターコントローラー裏側
取り外したコントローラー裏側

4. モーターコントローラーの再取り付け

洗浄したPCBにモーターコントローラーを再装着し、動作できる状態へ整えます(写真なし)。

5. ヘッド吸着の確認と解消

内部ではヘッドがプラッター表面に吸着して動けない状態のため、慎重に吸着を解除し動作可能な位置へ戻します。

6. データ抽出

読めないセクタを可能な限り避けながら全体を複製し、その後専用ツールで解析して復旧可能なデータを抽出します。

復旧結果

PCB腐食とヘッド吸着という複合障害が発生したHDDですが、基板処置・内部処置・複製作業を順に進めることで、取得可能なデータを安定した状態で確保できています。

技術者コメント

PCB腐食とヘッド吸着はそれぞれ単独でも動作不能につながる障害ですが、同時発生では工程が大きく増えます。
状態を悪化させるリスクもあるため、不調を感じた段階で通電を控え、早めの相談が安全につながります。

執筆者プロフィール

情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。

チーフエンジニア N.

PCB腐食とヘッド吸着が発生したHDDの重度物理障害からデータを復旧する手順|基板処置と内部処置の実例【ST6000DM300】

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