Seagate ST3000DM001 スクラッチ障害(磁性体剥離)データ復旧

復旧事例|2024年02月2日

概要

症状/障害判定

異音がして読み込み不可。開封後、スクラッチ障害(磁性体剥離)と判定。

作業期間

6日間

復旧結果

正常なファイルを150GB程度復旧

作業内容

初期診断として通電してみたところ、カチッカチとよく耳にする音でした。

このモデルはプラッター(=HDDに内蔵されるデータ記録用の円盤)にダメージが入るスクラッチ障害が異常に多いので、開封して状態を確認したところ、案の定、トップ画像のように円状の傷が入っていました。

このモデルは専門的にはSeagateの 「Grenada」というグループに属しますが、案件の多さからGrenadaのスクラッチ障害は手慣れています。

 

一見するとスクラッチは比較的ほそい線であったので、以前の記事「Seagate ST2000DM001 スクラッチ障害データ復旧」のように、スクラッチを避けながら同じ面の外側をデータ抽出できると思いましたが、ライトを使ってよくチェックしてみると...

残念ながら内側のスクラッチだけでなく、面の全体にわたってスクラッチが入っていました。

ライトで照らすとしっかりとした深さのある傷でしたので、この面からのデータ抽出を断念しました。

(写真でお伝えするのは難しいですが、肉眼でみると「どれだけくっきりした傷なのか」というスクラッチ障害の程度はよく分かります。)

 

今回のスクラッチ障害案件は、通常のスクラッチ障害よりも厄介な部分がありました。

それは、スクラッチのある面が何番目の面かということです。

一番下の面を0から数えて、S0, S1, S2, ...(SはSurfaceの頭を取っています)とすると、今回スクラッチがあった面はS1に該当します。

実は、S0とS1にファームウェアが保存されているシステムエリアが存在するので、スクラッチ障害によって抽出できるデータが欠損しているだけでなく、HDD自体を起動するためのファームウェアも欠損している状態ということになります。

S1にあるシステムエリアは、S0にあるシステムエリアのバックアップであるので、HDDごとに固有なファームウェアを喪失しているわけではありません。

しかしながら、本来は両輪であるはずのシステムエリアの片輪を失っていると、ファームウェアに関連する様々な問題が生じます。

スクラッチ障害の本当に難しいところはここです。

当然モデルにもよるのですが、少なくともこのGrenadaというグループのHDDにおいては、スクラッチというダメージをバイパスすること自体は特別難しくありません。スクラッチを回避するために欠損部分が生じたり、スクラッチの発生過程でマイナーなダメージが生じるが、れらに起因するファームウェア障害こそがスクラッチ障害の本当の難所であり、技術の違いが表れる部分です。

スクラッチそのものを回避するための作業は、プラッターのクリーニングやファームウェアの調整等、たしかに面倒ではあるのですが、基本的には定型作業です。

やることはいつも同じです。

しかし、スクラッチ回避のための処置をした後、HDDを起動したときに明らかになるファームウェア障害は、案件ごとに千差万別です。

数ある処置の中から最適な手段を、ダメージが拡大しないうちに選択して施していかねばなりません。

そして、ファームウェア障害を克服してようやくデータ抽出を開始できるのです。

もちろん、スクラッチの発生している面のデータ抽出であったり、細かいスクラッチがまばらに広がっている面であったりと、面の状態が悪いときのデータ抽出は、ダメージを余計に広げてしまいかねない恐さや、ヘッドを無駄にしてしまう難しさはあります。

しかし、これらはデータ抽出の難しさで、データ抽出の段階においては上記の「欠損に起因するファームウェア障害」こそが最も厄介な部分だと個人的には思います。

記事「東芝DT01ACA300 超重度スクラッチ障害データ復旧」でも発生していましたが、スクラッチ障害はエラーや欠損等でファームウェア障害を併発する可能性が高く、そういったファームウェア障害を克服しないとデータ抽出を始めることすらできないのです。

 

とはいえ、今回は大きな問題も出ず、危なげなく83%程度のデータを抽出しました。

83%というのは、3枚あるプラッターの裏表の全6面のうち1つの面を喪失したが、他の面からは無事データを抽出できたということです。

また、幸いなことに他の面の状態はよく、それらの面ではほぼエラーもありませんでした。

初期診断からデータ抽出作業、解析作業、復旧可能ファイルのリスト作成、納品までとスムーズに進み、納品までに6日間で済みました。

 

このSeagateのモデルは特に対応件数が多く、経験も豊富ですが、ほかにも様々なメーカー・モデルのHDDでスクラッチ障害に対応可能です。

お困りの際は、スクラッチラボにぜひご相談ください。

執筆者プロフィール

情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。

チーフエンジニア

Seagate ST3000DM001 スクラッチ障害(磁性体剥離)データ復旧

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