Seagate ST2000DM001 認識不可のHDD復旧
復旧事例|2026年07月24日
復旧事例の概要
| 復旧対象 | Seagate ST2000DM001 2TB |
|---|---|
| 故障症状 | HDDを認識しない、異音が発生している |
| 診断内訳 | かなり激しめのスクラッチ障害 スクラッチ |
初期診断と復旧プロセス
内部点検1
他社様で復旧不可ということで弊社に来たHDDです。
復旧対象のHDDは開封済みであったため、まずは内部点検を実施します。
もし、プラッターに傷が発生していたり、ヘッドが変形していたりする場合、それらの対処をすることなく通電を繰り返すと、傷の拡大または新規の傷を発生させ、HDDの状態を悪化させてしまうからです。
では、このHDDはどうであったか…
蓋を開けると、一番上の記録面にくっきりとした円状の傷が出来ていることが分かります。
内部点検2
ヘッドを取り外した後の写真です。
画像のオレンジ色の部品は、HDDが停止時にヘッドが留まる部品です(「ランプ」といいます)。
この部品がスクラッチダストで黒くなっていますね。
内部点検3
上のプラッターを取り外した後の写真です。
このHDDにはプラッターが2枚内蔵されており、そのうちの下側のプラッターの表側の記録面の様子になります。
先ほどよりさらに酷い傷が見られます。
これは相当太さのある傷です。
(というか普通に復旧を諦めるレベルの傷です…)
復旧作業
HDDの筐体全体とプラッターのクリーニングを行いました。
上の写真は筐体を布で拭ったときの様子です。
布が真っ黒になるほど汚れていたことが分かります。
プラッターにスクラッチダストが付着したままだと、ダストで汚れてヘッドが機能しなくなるだけでなく傷を広げてしまいますので、当然プラッターもクリーニングします。
これだけダストが飛散していたわけですので、かなり丁寧なクリーニングが必要でした。
さて、こちらのHDDですが、写真でお見せしたのは一部の記録面になりますが、実際には、4つの全ての記録面に2mm幅以上の太めのスクラッチが発生している状態でした。
どの記録面にも傷が発生している状態ですので、傷のある面を避けてデータ抽出を行うという、通常どおりのスクラッチ障害の処置方法では対応できません。
また、ヘッド交換のみでトライしたら、傷の程度が極めて酷いため、スクラッチにより即座にヘッドが破壊されてしまいます。
今回は特殊な方法でHDDを起動させることでデータ抽出を行いました。
(通常のスクラッチ障害の処置のワンランク上の処置です)
復旧結果とチーフエンジニアの所感
復旧結果
データ抽出の工程では、なんとデータ使用領域の97.9%のセクターを回収することができました。
抽出したデータからファイルを取り出し、最終的に約30,000件(40GB)のファイルをフォルダー構造を維持したままで正常に復旧することができました。
7,000件(180GB)程度はエラーを含む破損ファイルとなってしまいましたが、これらに該当するものの大半は動画ファイルであり、再生自体は可能(部分的にノイズが発生する)なものもかなり多くありました。
流石にこれだけの傷ができていると、綺麗に見える部分も細かいエラーが発生してしまいます。
破損ファイルは結構出てしまいましたが、傷の程度を考慮すると、信じられないほど良い結果となりました。
担当エンジニアより
今回はSeagate製のHDDで、「Grenada」というファミリーでした。
これだけのダメージがあったので、さすがに無理だろうと思っていましたが、やってみたら思った以上に良い結果となりました。
上の写真は下側のプラッターの上側の記録面をライトで照らしたときの様子です。
記録面の内側(回転軸側)は完全に崩壊していますが、外側が案外きれいなんですね。
この状態を確認して、復旧不可を伝えるのではなく、とりあえずやってみようと判断することにしました。
最終的にはデータ使用領域の97.9%のセクターを回収できたのですが、なぜそこまで回収できたのかと言うと、いくつもの幸運が重なったためです。
- 記録形式(フォーマット)がWindows用のNTFSであった
- データの使用量が媒体の容量と比べて少なかった
- どの記録面にも傷は発生していたが、その位置はいずれも内側(回転軸側)、または、中央あたりであった
- スクラッチが発生しやすいモデルで知見や技術が最も蓄積されているモデルであった
NTFSはデータを番地(LBA)の若い順に記録していく傾向があり、また、使用データ量が多くはなかったため、番地(LBA)の若いところに集中していました。
この番地(LBA)はHDDのプラッターの外側から内側へマッピングされます。
すなわち、発生していた傷の位置とデータが記録されている位置が重なっていなかったという訳です。
さらに、スクラッチ最頻発のファミリーであったため、このような傷が内側に発生しているケースでも対応するための手法を知っており、かつ、実戦で何度も経験があった、ということです。
たとえば、これがNAS内蔵のHDDでフォーマットがXFSであったり(XFSだと番地の若い順から記録していくわけではないです)、容量満杯に使用していたり、容量が少なくても傷の位置が外側だったりしたら、全然違う結果になっていたと思います。
おそらくお客様があまり通電を繰り返していなかったこと(傷が発生してからもしばらく回転し続けていたためにここまでの傷になったのだと思われますが、電源のON/OFFが少なかったために、ヘッドがあまり動かなかったのでは?)、他社様もすぐに諦めるレベルでほぼ処置もされずに来た、ということも復旧できた要因かもしれません。
このファミリーのHDD(ST2000DM001/ST3000DM001/ST2000DM0006 etc)はどの業者様よりも復旧できる自信があります。
是非スクラッチラボまでご相談ください。
執筆者プロフィール
情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。
Seagate ST2000DM001 認識不可のHDD復旧
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