【復旧事例】Seagate ST3000VM002 異音・起動不可|スクラッチ障害から約10万ファイルを救出
復旧事例|(更新:)
復旧事例の概要
| 復旧対象 | Seagate ST3000VM002(3TB・NAS/監視カメラ用HDD) |
|---|---|
| 故障症状 | 起動時に異音(ガリガリ・カチカチ)が発生し、認識不可 |
| 診断内訳 | スクラッチ障害 重度 |
初期診断と復旧プロセス
「突然、ガリガリという異音がしてHDDが読めなくなってしまった。中のデータは仕事で使っていた大切なものばかり……」
今回ご依頼いただいたのは、そんな切迫した状況でお問い合わせをくださったお客様です。対象は監視カメラ向けのNAS用HDD、Seagate ST3000VM002(3TB)。診断の結果、最も深刻な物理障害のひとつであるスクラッチ(プラッター傷)障害が確認されました。本記事では、診断から復旧までの全工程を詳しくお伝えします。
復旧事例の概要
- 障害の種類:物理障害(磁気ヘッド損傷 + プラッタースクラッチ)
- 使用機材:PC-3000 データ復旧装置(業務用)
お預かり時の状況と初期診断
HDDが届いた際、外観に目立つ損傷はありませんでした。しかし電源を入れた瞬間、ヘッドがプラッターを擦る独特の「異音」が確認できました。この時点で、物理障害の中でも特に危険なスクラッチ障害の可能性が高いと判断しました。
危険ですので、この段階で通電を即座に停止しました
⚠️ 異音がしたらすぐに電源を切ってください。
スクラッチ障害は、動作を続けるほどプラッターの傷が広がり、データが失われる面積が増えていきます。「もしかしたら直るかも」という期待で再起動を繰り返すことが、最大の被害拡大につながります。異音を感じたら即座に電源を落とし、専門業者にご相談ください。
開封・修復・データ救出の全工程
スクラッチ障害の復旧は、クリーンベンチでの精密作業が不可欠です。空気中のわずかな塵でもプラッターに傷をつける可能性があるため、全工程を管理された環境で実施しております。
1
クリーンルームでの開封・内部確認HDD を慎重に開封。内部を目視確認したところ、磁気ヘッドアセンブリの損傷と、プラッター表面への複数のスクラッチが確認されました。ヘッドがプラッターに接触し続けたことで傷が生じていた典型的なケースです。
2
スクラッチ範囲の特定と損傷評価傷の位置・深さ・範囲をマクロ撮影で記録し、データの損失が避けられないエリアを特定しました。傷の入っていない領域がどれだけ残存しているかが、復旧率を大きく左右します。
3
磁気ヘッドの交換損傷したヘッドアセンブリを、同機種・同リビジョンの互換ヘッドに交換。ヘッドの個体差がデータ読み取り精度に直結するため、部品選定と取り付け精度がここでの腕の見せどころです。
4
PC-3000 によるデータイメージ取得ヘッド交換後、PC-3000 を用いてプラッターから読み取れる全セクタのイメージを取得。スクラッチ部分は読み飛ばしながら、正常領域を優先的にサルベージしていきました。
スクラッチの状態(接写画像・動画)
実際のプラッター表面を接写撮影した画像です。光の当たり方によって、円弧状の傷がはっきりと確認できます。
以下の動画では、スクラッチが入ったプラッターの実際の状態をご覧いただけます。傷の深さと範囲から、いかに深刻な状態だったかがわかります。
今回のスクラッチはプラッター全面に及んでいたわけではなく、比較的局所的に集中していました。これは不幸中の幸いで、傷のない外周・内周エリアに重要なデータが残存していた可能性がありました。諦めずに全セクタの読み取りを試みることで、想定以上のデータを救出することができました。スクラッチ障害でも、すぐに電源を切って持ち込んでいただければ、データが残っているケースは少なくありません。
復旧結果とチーフエンジニアの所感
復旧したファイルの総数・総容量
最終的に、以下の結果でデータの救出が完了しました。Goodファイル(正常復旧)だけで 約107,940ファイル・127.73GB のデータを取り出すことができました。
(Root)フォルダー構造等を含めて復旧できたもの
[Summary]
Good : 107,940 files (127.73 GB)
Bad : 22,642 files (132.39 GB)
─────────────────────────────────
Total: 130,582 files (260.11 GB)
※ Good:正常な復旧が見込まれるファイルです。ファイルとして完全に開ける状態です。
※ Bad:スクラッチなどの影響で一部データが欠損したファイルです。開ける場合と開けない場合があり、開けた場合も内容に欠けがある可能性があります。
スクラッチ障害という最重度の物理障害でありながら、全体の約49%(容量ベース)を正常な状態で救い出すことができました。ご依頼者様にはファイルリストをご確認いただき、必要なデータが含まれているかチェックしていただく予定です。
今回の事例から学べること
「異音がしたけれど、そのうち直るかと思って使い続けた」というお声は、残念ながらよくお聞きします。しかしスクラッチ障害において、この判断が復旧率を大きく下げる原因になります。異音 = 即電源オフ、これだけを覚えておいてください。
また、「物理障害は復旧できない」と思い込んでいる方も多くいらっしゃいます。今回のように重度のスクラッチが入っていても、適切な設備と技術があれば相当数のデータを取り戻せる可能性があります。まず一度ご相談いただけますと幸いです。
執筆者プロフィール
情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。
【復旧事例】Seagate ST3000VM002 異音・起動不可|スクラッチ障害から約10万ファイルを救出
現在、お客様の手元で上記と全く同じ症状、あるいは同型のHDDのトラブルが発生していませんか?
スクラッチ障害は、1秒ごとの通電がデータの破壊を進めます。手遅れになる前に、ぜひご相談ください。
お見積りも、作業費も、0円※です。 ※復旧データリストをご確認いただき、納品を希望される場合にのみ費用が発生いたします。
キャンセルの場合、機器の送付・返却にかかる往復の送料は、お客様のご負担となります。