【ST3000DM008】他社復旧不可・重度物理障害(スクラッチ・ヘッド破損)からのデータ復旧事例

復旧事例|2026年01月19日

他社復旧不可・重度物理障害(スクラッチ・ヘッド破損)からのデータ復旧事例

HDD内部の物理障害の様子

他社にて「復旧不可」と診断されたHDDのデータ復旧事例です。
診断の結果、HDD内部でデータを読み書きする「ヘッド」と、データ記録面である「プラッター」に深刻な物理的損傷が発生していることが判明しました。

内部調査による損傷状況の確認

クリーンベンチ内でHDDを開封し、内部状態を詳細に調査します。
複数の箇所で致命的な物理障害が確認されました。

ヘッドの破損と変形

データを読み書きする磁気ヘッドにおいて、複数の損傷が見られます。
下から4番目のヘッドは先端が物理的に折れ曲がっており、正常な読み書きが不可能な状態です。

先端が折れ曲がった磁気ヘッドの拡大写真
※物理的な衝撃等により、ヘッドの先端が変形しています。

また、下から3番目のヘッドでは、ヘッド先端の黒い部品(スライダー)が剥離して脱落しています。
この脱落した部品がプラッター上を移動することで、さらなる損傷を引き起こす原因となります。

部品が剥離した磁気ヘッドの様子

ヘッドから剥離した微細な部品
※剥がれ落ちた部品の接写。

プラッターのスクラッチ(円周状の傷)

破損したヘッドがプラッターに接触したことで、記録面に円周状の深い傷(スクラッチ)が発生しています。
下から4番目の面でスクラッチが視認でき、ランプ(ヘッド退避場所)の亀裂状況から、下から3番目の面にも同様のスクラッチが発生していると推測されます。

スクラッチが発生した領域のデータは物理的に削り取られており、復旧は不可能です。また、削られた磁性体の粉塵がHDD内部を汚染し、他の健全なデータ領域の読み出しも困難にします。

出典:https://media-sos.com/_app/wp-content/uploads/2026/01/PXL_20251031_142707336.mp4
※プラッター表面に発生したスクラッチの様子を動画で確認できます。
プラッター表面のスクラッチ(傷)の拡大写真
※記録面に深い傷が入っていることが確認できます。
スクラッチ傷

さらに、ヘッドを退避させるための部品である「ランプ」の下から3番目と4番目の箇所にも亀裂が確認されており、強い衝撃やヘッドの異常動作があったことが伺えます。

復旧処置と結果

本件は、複数のヘッド破損とプラッターのスクラッチを併発する、非常に重度な物理障害です。
損傷した部品の交換作業に加え、スクラッチによる影響を最小限に抑えつつデータを読み出すための高度な調整が必要となります。

スクラッチラボでは、このような重度障害に対しても専門的な技術を用いて対応を行い、可能な限りのデータ回収作業を実施し、納品を完了しました。

まとめ

他社で復旧不可と判断される案件の中には、本件のようにヘッド破損やスクラッチといった重度の物理障害が原因であるケースが多く存在します。
状態は深刻ですが、適切な処置を行うことでデータの一部を救出できる可能性があります。

執筆者プロフィール

情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。

チーフエンジニア

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