Seagate ST31000520AS 異音が発生する症状のデータ復旧

復旧事例|2024年06月17日

概要

本記事でご紹介する復旧事例は、Seagate製HDD ST31000520AS です。
このドライブは、スクラッチが発生すると粉まみれとなってしまうことで悪名高いモデルの1つです

ファミリーネームは「Hepburn」です。ちなみに、この「Hepburn」と「Pharaoh」、「Brinks」というファミリーが、粉まみれSeagateの三大巨頭です。

(ファミリーについてはこちらの記事も参照してみてください。)

 

 

他社復旧不可 超重度スクラッチ障害(磁性体剥離)(2024年5月)

症状/障害判定

他社復旧不可ということで開封済みの状態で入庫
蓋を開けてみると、スクラッチ(磁性体剥離)が発生していることを確認

作業期間

1か月程度

復旧結果

正常なファイルを290GB程度復旧(ファイル数は300,000件程度)

破損ファイルは260GB程度(3,500件程度)

復旧失敗ファイルは260GB程度(40,000件程度)

 

ここでの「破損ファイル」はエラーを1つでも含むファイル、「復旧失敗ファイル」はファイルの先頭にエラーがあるファイルとしています。前者はエラーの程度や場所次第ですが開ける場合があるファイルです。後者は開けないファイルです。

 

作業内容

HDDは開封済みであったので、クリーンベンチへ直行。さっそく蓋を開けて中を見てみると、ちょっと触ったら手袋が真っ黒になるレベルで粉まみれの状態でした。

写真をご覧いただけると銀色のプラッター(=HDD内部の部品でデータ保持に使われる円盤)の内側部分にかなり深い傷がついており、また、プラッターの外側半分はヘッド(=データの読み書きに使われるレコードの針みたいな部品)がプラッターを傷つけたときに発生したダストで覆われています。プラッター上には、黒いポツポツとした小さなほこりのようなものも見えますが、これらも傷をつけたときに発生したダストです。

 

フィルターポケットの部分は大量にスクラッチダストがたまっています。

 

フィルターもかなり黒くなっています。

 

このHDDは2枚のプラッターで構成されています。

下側のプラッターを見てみると...

外側がダストに覆われている状況は先ほどのプラッターと同じですが、こちらのプラッターは内側もすごいことになっています

 

このようにスクラッチダストで覆われたままでは、たとえヘッドを交換してもすぐにデータを読み取れなくなるばかりか、ダメージを広げてしまいかねません。

したがって、まずはプラッターのクリーニングを実施します。

 

こちらはクリーニングした後の下側のプラッターです。

だいぶ綺麗になりましたね!

クリーニングしたことで、プラッターの表面の傷の程度が分かるようになりました。真ん中よりやや内側の部分にもスクラッチが発生している様子が見て取れます。また、外側の部分はスクラッチダストを取り除いたら、案外きれいな状態であることも分かりました。

 

このHDDのプラッターは2枚でヘッドが4本あります。すなわち、プラッターの裏表がそれぞれデータの記憶に使用されているということですが、プラッターの各面を下から順にS0, S1, S2, S3と呼称すると、各面のダメージ状況は下記のようでした。

 

S3 - ランディングエリアに2mm幅スクラッチ

S2 - ランディングエリアに2mm幅スクラッチ、内側2/5~1/2までの区間に細かいスクラッチ

S1 - ランディングエリアに2mm幅スクラッチ、内側2/5の位置にスクラッチ、内側2/5~1/2までの区間に細かいスクラッチ

S0 - ランディングエリアに2mm幅スクラッチ、 内側1/2の位置にスクラッチ, 外縁付近にスクラッチ

 

※ 「ランディングエリア」というのは、HDDが停止しているときにヘッドがとどまる場所です。(ということは、データの記録に使われていません)

※「内側2/5」ってどういう表現だ?と自分でも思いましたが、内側を0、外側を1としたとき、どの辺りの位置なのかを示しているつもりです。

 

ちょっと傷が多すぎますが、頑張りました。まともなのはS3ぐらいですね。

4本あるヘッドはいずれもダメになっているので交換します。

また、かなり深刻なスクラッチがランディングエリアにあるので、少々特殊な方法でHDDをスピンアップさせます。(そうしないと、スピンアップの途中でヘッドが故障してしまいます。)

システムエリアと呼ばれるHDDのファームウェアが格納されている領域を含む面にもスクラッチが発生しているので、HDDの起動方法(データ転送ができる状態にするための処理)も特殊な方法を使いました。

最終的にはドライブ全体の70%程度のデータを抽出することができました。

 

その結果、エラーを全く含まないファイルを290GB復旧できました。読み取りエラーを含むファイルも260GB、完全に開けないファイルも260GBでてしまいましたが、HDDの状態を鑑みるとかなり良い復旧結果になったと思います。エラーを含むファイルも、いくつかピックアップして確認しましたが、開けるものも結構ありました。

スクラッチ障害が発生してしまうと、どうしても読み取りエラーが発生してしまいます。これは避けられません。

ただ、復旧結果を提示させて頂いたときに、どのファイルがokでどのファイルが復旧失敗なのか分からないとお客様も困ってしまいます。

そこで弊社では、各ファイルに対してエラー率を示した一覧を診断結果として提示しております

本案件ではファイルレコードをほぼ全て回収できたので、どのファイルは復旧できて、どのファイルは復旧できなかったのかという一覧を作成することができました。

今回は一覧の中に必要なファイルがあったということで、無事、納品にまで至りました。

 

これだけ状態の悪いHDDからデータを復旧できる復旧業者はまず無いと思います(そう思いたい!!)

お困りの際はぜひスクラッチラボへご相談ください!

執筆者プロフィール

情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。

チーフエンジニア

Seagate ST31000520AS 異音が発生する症状のデータ復旧

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