【復旧事例】USB端子一体型HDD基板のUSBコントローラー故障からのデータ復旧
復旧事例|2025年10月10日
概要
今回ご依頼いただいたのは、Western Digital製の1TB HDD「WD10SDRW」。このモデルはUSB端子が直接基板(PCB)に実装されているタイプで、一般的なSATA接続とは異なる構造をしています。
この構造上、USBコントローラーが故障するとHDD全体が認識されなくなり、単純な基板交換ではデータ復旧ができません。
理由は、このシリーズがSED(Self Encrypting Drive)暗号化対応で、オリジナルのメインコントローラーが持つ暗号キーとデータ領域が一致しないと、内容を読み出すことが不可能なためです。
故障原因
診断の結果、基板上のUSBコントローラーICの故障が判明しました。
USBコントローラーは、
USB端子 → USBコントローラー → メインコントローラー → HDD本体
という信号経路の中継部分を担っており、これが故障するとPC側で全く認識されなくなります。
作業内容
今回の復旧では、USBコントローラーが完全に動作不能であったため、通常経路を使わずメインコントローラーへ直接信号をバイパス接続する特殊処理を行いました。
作業手順の概要は以下の通りです。
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キャパシターの一時取り外し
まずUSBコントローラーの手前にあるキャパシターを外し、信号を一時的に遮断して挙動を確認しましたが、この状態では電流が安定せず起動できませんでした。 -
USBコントローラーICの除去
故障したICが電流を吸い取ってしまっていたため、USBコントローラー自体を除去。これにより電源系統が安定し、メインコントローラーが起動可能に。 -
SATA信号のバイパス配線
USBコントローラーとメインコントローラーの間にジャンパー線を取り付け、外部からSATAインターフェースとしてアクセスできるよう改造。
絶縁・導通確認後、SATA治具に接続して読み出しに成功しました。 -
データ抽出と検証
データ復旧装置(PC-3000)でクローンを作成し、ファイル構造の整合性を検証。異常セクタは確認されず、全データのアクセスが可能でした。
作業期間
初期診断からデータ抽出完了まで、3営業日で完了しました。
精密はんだ作業・導通検査を含む基板修復が必要でしたが、スムーズに復旧まで進めることができました。
復旧結果
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復旧対象:Western Digital WD10SDRW(1TB USB直付けタイプ)
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故障箇所:USBコントローラーIC
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復旧方法:USBコントローラー除去+SATAバイパス配線
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復旧結果:全データアクセス成功(整合性100%確認済み)
HDDはSATA経由で安定稼働し、全てのデータを無事に復旧することができました。
技術者コメント
このモデルはUSB直付けかつSED暗号化モデルのため、基板交換ではデータが復旧できません。
今回はUSBコントローラーの故障により電流が吸われていたため、ICを除去することで電源が安定し、SATAバイパスでデータアクセスが可能になりました。
同様の症状のHDDでも、安易に基板を交換せず、必ず専門診断を受けることをおすすめします。
まとめ
最近のUSB端子一体型HDD(特にWestern Digital製)は、USBコントローラーが故障すると認識されなくなるケースが多く、従来の基板交換では復旧できないことがあります。
今回のように、USBコントローラーをバイパスして信号経路を再構築することで、暗号化されたHDDでもデータ復旧が可能になる場合があります。
スクラッチラボでは、マイクロソルダリングによる精密修復や、暗号化対応モデルの復旧に多数の実績があります。
「USB端子が折れた」「接続してもランプが点灯しない」などのトラブルが発生した際は、ぜひ一度ご相談ください。
執筆者プロフィール
情報処理安全確保支援士。新卒で警察庁技官としてフォレンジック業務に従事。情報通信局長賞をはじめ、警察大学校附属の情報通信学校長賞など多数の表彰経験がある。その後、大手データ復旧業者を経て、株式会社FIXに入社。同社にてHDDやSSD、フラッシュメモリ、RAIDの論理障害から物理障害まで復旧業務の全工程に携わる。特にHDDの重度物理障害を得意とし、プラッターに傷が発生したスクラッチ障害を年間100件近く取り扱い、その多くを復旧に導いている。
【復旧事例】USB端子一体型HDD基板のUSBコントローラー故障からのデータ復旧
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