〖復旧事例〗USB Type-C直結コントローラー採用SSDのSafe Mode起動によるデータ復旧
概要
今回対応したSSDは、一般的なポータブルSSDとは構造が異なり、
SSDコントローラー(=データの入出力等を制御するチップ)が直接USB Type-Cと信号のやり取りを行う仕組みです。
多くのSSDでは、NANDと通信するコントローラーと、USB信号へ変換するコントローラーの
2つが搭載されていますが、本件のSSDは1つのコントローラーでUSB信号まで処理するタイプとなります。
参考構造はこちらでも紹介しています。
USB端子一体型HDD基板のUSBコントローラー故障からのデータ復旧


ご相談時の症状
通常通電してもSSDとして全く認識されず、パソコン側でドライブとして表示されない状態を確認。
外装の破損などはなく、原因は内部制御かファームウェア関連の不具合と判断し、基板レベルで調査を行います。


診断結果と障害のポイント
SSDは起動時に、NANDメモリに保存されているファームウェアを読み込みます。
しかし今回は、このファームウェア自体、またはNANDからの読み取り処理に問題があり、
通常起動ルートでは途中で固まってしまう状態でした。
そのため、正常な起動に必要な制御が開始されず、パソコン側からは一切認識しない状態になっていました。
この状況を回避するため、ファームウェアを読み込まずに起動できる特別なモードを使用する必要があります。
作業内容
1. Safe Modeでの起動(特定ピンのショートによる起動)
まず、基板上の特定ピンをピンセットでショートさせながら通電し、
SSDをSafe Modeで起動させます。
Safe ModeではNAND上のファームウェアをロードしないため、
ファームウェアの異常によるフリーズを防ぎ、外部制御を可能にします。

2. PC-3000ローダーのアップロード
Safe Modeで起動したSSDに対して、データ復旧装置PC-3000が提供している
専用のローダーファームウェアをRAMにアップロードします。ファームウェアの主婦位は複数あり、正しく適合するファームウェアを選択する必要があります。
このローダーにより、本来のファームウェアが正常に機能しなくても、
SSD内部の制御を外部から直接行える状態になります。


3. トランスレータのビルド
続いて、OSから見える番地とNANDメモリ内部の配置を対応付ける
トランスレータの構築作業を行います。
この対応表が正常でなければ、読み出したデータを正しい構造として取り出すことができません。
4. NANDデータの読み出し
トランスレータの構築が完了後、対応表に基づいてOSで見える番地順に、
NANDメモリのデータをセクタ単位で読み出します。
まずはテストとして1セクタのみ読み出した画面がこちらです。


問題がないことが確認できましたので、本格的な抽出を行います。
緑色で表示された部分が正常に読み出せたセクタで、画面全体が緑一色になっており、
非常に良好な状態でデータが取得できていることが分かります。

復旧結果
Safe Mode起動、ローダー適用、トランスレータの構築を経て、
NANDメモリからのデータを安定した状態で抽出することに成功しました。
通常起動では全く認識されなかったSSDでも、手順を踏んだ制御により
データ領域へアクセスできる状態まで復旧できました。
技術者コメント
本件のように、SSDコントローラーがUSB Type-Cと直接通信するタイプは構造が特殊で、
障害時のアプローチも一般的なSSDとは異なります。
USBタイプSSDのファームウェア領域の解析や修復には、最新のPC-3000 Portableシリーズをはじめとした
専用設備が重要になります。同じデータ復旧業者であっても、この装置を保有していないケースは多いため、
業者選定の際には設備面にも注意していただくと安心です。
スクラッチラボでは、スクラッチ障害を含む重度物理障害に強みを持ちながら、
SSD分野の技術強化にも継続的に投資し、対応できるケースの幅を広げています。
SSDのファームウェア修復は、担当者の経験だけでなく、正しい設備を備えているかどうかが結果を左右する場面が多くあります。
認識しない症状が出た段階で通電を控え、早めにご相談いただくことをおすすめします。



