業界トップクラスのデータ復旧率!最新の設備とベテランエンジニアが大切なデータを復旧・復元します。
HDDを落下後、異音がして認識しない。開封後、スクラッチ障害(磁性体剥離)と判定。
2週間程度
正常なファイルを230GB程度復旧(ファイル数は32,000件程度)
今回のデータ復旧の対象はIO DATA製の外付けHDD HDCL-UTE3W、内蔵HDDはWestern Digital製のWD30EZRZ-22Z5HB0でした。
このHDDを取り出して通電してみると、ウィーンカシャカシャみたいな音が2回鳴ります。
ヘッド(=HDDのデータの読み書きを行う部品)が故障し、プラッター(=データを記録する円盤)上での位置が分からなくなると、このような状態に陥ります。
ちなみに、こんな感じの音です。(かなり雑音も入っていますが…)
このHDDを開封してみます。まずはこの写真。
ヘッドの様子です。ぐしゃぐしゃになっています。
下から3本目と5本目はピン先が曲がり、また、ほかのヘッドにはある黒い長方形の部分(スライダーと呼ばれます)が消失しています。
おそらく、落下の衝撃が激しかったのだと推測されます。
つづいてプラッターの様子です。
1枚目はプラッターに粉が付着している様子になります。
この粉は、ヘッドの停止位置にあるランプと呼ばれる部品とプラッターとが落下時の衝撃で接触し、それによって生じたプラスチック粉です。
プラッターの内側の円と外周の真ん中あたりに線のようなものが見えますが、これはスクラッチではなく、プラスチック紛がこの部分に集積しているだけです。
まだ傷がついていないとはいえ、この状態でデータ抽出を行うと、この部分のデータの読み取りの最中にほぼ確実にスクラッチ(磁性体剥離)を作ってしまいます。
そのため、プラッターのクリーニングを行い、きれいな状態にする必要がありました。
こんどは本当にスクラッチが発生しているプラッターの面です。
上の写真はプラッターの外側にダメージが、下の写真にはボツボツとした窪みが6連続で並んでいます。
上の写真のスクラッチは派手な傷ではないですが、厄介な傷です。何が厄介かと言うとその位置です。
通常、HDDは外側からデータを書き込んでいきます。
また、Windowsの場合、最初の方に書き込まれるデータというのはファイルの名前やサイズ、日時、データの所在番地等を示した管理的な領域です。(ファイルシステムに関連する部分です。ファイルシステムについてはこちら)。
すなわち、外側にダメージがあるということは、せっかくデータを抽出しても、ファイル名などに関する情報を喪失しているため、どのファイルのデータかわからなくなるという事態に陥ってしまうということです。
この面にそういったデータがなくても(実際本案件にはありませんでしたが)、動径方向の同じ位置にダメージがあると他の面の読み取りにも影響を与えかねません。
また、この位置のダメージはこのモデル特有の理由で難儀です。
下の写真は、落下時の衝撃が相当に強かったのでしょうか…?ここまで深い窪みは初めて見ました。
この上をヘッドが通過したら、すぐさま故障してしまいそうです。
この面のデータを抽出する際には、この部分を通過しないよう策を施して外周部のデータを読み取り、外周部のデータが読み終わったらこの窪み付近のデータを取るという手順を踏みました。
今回のお客様が必要とするデータは写真や動画でした。
写真はよいのですが、動画ファイルはスクラッチ障害(磁性体剥離)が発生している案件だと、どうしても破損ファイルが発生してしまいます。
スクラッチが発生していると、その部分を避けてデータの抽出を行う必要があるため、データの欠損が生じるからです。
また、スクラッチが発生している時点で細かいダメージが散在しており、読み取りエラーが発生してデータが欠損しまいます。
動画ファイルはサイズ大きいので、その分、欠損が生じる可能性が高くなってしまうのです。
冒頭では「正常なファイルを230GB復旧」と書きました。
ただ正直に言うと、本案件では1GBを越えるサイズの動画ファイルが多数存在し(中には数十GBのものもありました)、容量ベースでは1.6TBが欠損を含む破損ファイルとなってしまいました…。ちなみに、この1.6TBはファイル数でみるとたったの1,300件です。
とはいえ、部分的に欠損しても再生できるものが大半であったため、そういう点では復旧の意義はありました。
お客様にもご納得いただき、納品できました。
当ブログのスクラッチ障害はSeagate製のHDDが圧倒的に多いですが、Western Digital製のHDDもしっかりとスクラッチ障害(磁性体剥離)に対応しております。
お困りの際はぜひスクラッチラボへご相談ください。
他社様で開封されていても追加費用はありませんよ!