業界トップクラスのデータ復旧率!最新の設備とベテランエンジニアが大切なデータを復旧・復元します。
中のデータを見ることができない。
3日間
正常なファイルを1.2TB程度復旧(99.9%復旧)
初期診断で通電したとき、最初の部分は若干データが読めたので、ドライブとしてのイニシャライズ(=データが読める状態になること)を完遂できることはわかりました。
そのため、データの安定した読み込みができない原因として、ヘッドの故障またはファームウェア障害が疑われました。
以前の記事 Seagate ST2000DM001 スクラッチ障害データ復旧 では、
「構成しているヘッドが一本でも故障してしまうと、HDDが正常にデータを読み取れるような状態ではなくなってしまう」
ということを書きましたが、今回は「データの読み取り能力がかなり落ちているが、完全には故障してはいない」という状態なので、イニシャライズ自体はできたのだろうという考えていました。
このドライブは2枚のプラッター(=データを記録する円盤)と4本のヘッドで構成されていますが、どのヘッドが弱っているのか確認するには、ヘッドマップというものを作成します。
これは、データを記録する個々のアドレスが、どのヘッドに対応しているかを関連づけるものです。
実際にどのヘッドがどれくらいのスピードでデータの読み取りできるか計測することによって、ヘッドの健康状態がわかるのです。
ヘッドマップを作成するにあたって、必要な情報をドライブから取得しなければなりません。
そのためには、様々なファームウェアが格納されているシステムエリアと呼ばれる場所にアクセスする必要があります。
また、このモデルはファームウェアが壊れやすいので、ファームウェアの保全が不可欠です。
したがって、ヘッドに問題があっても、ファームウェアに問題があっても、いずれにせよ、まずはシステムエリアにアクセスする必要があるわけです。
しかし、ここで問題があります。
システムエリアへのアクセスは、特殊なATAコマンドをドライブに送ることで可能になります。
ATAコマンドというもの自体はSATA接続によるデータ転送に使用されており、ドライブがSATAで接続されているなら何ら問題はないのですが、このドライブは基板から直接USB端子が生えています。
SATAで接続できないので、ATAコマンドをドライブに送ることができません。
基板がUSB端子であるせいで、システムエリアには簡単にはアクセスできないのです。
そこで、基板からSATAの信号線を取り、導線をSATAのボードに配線することで、コマンドを送れるようにします。
写真のように配線することによって、システムエリアへのアクセスが可能になりました。
システムエリアのファームウェアをバックアップした後、ヘッドマップを作成して、データ抽出を再開しました。
その結果、特定のヘッドの読みが「場所によっては悪い」ということが判明しました。
ということは、そのヘッドでも十分なスピードで読み取りできるエリアも存在することから、実はヘッド自体はそれほど問題ではなく、プラッターにマイナーなダメージがあったということが推察されます。
当初の予想では、ヘッドの故障かファームウェア障害かという予想でしたが、実はプラッターに若干問題があったということでした。
セクターエラーは相当数あるものの、余計な開封作業をすることなく、十分な復旧結果を得ることができました。
WD Elementsは基板がUSB端子であること以外にも、データ復旧上で様々な難所(SMRドライブであること、SED等)が存在します。
このような難しいドライブであっても弊社では復旧作業に対応する技術があります。
お困りの際は、ぜひご相談ください。