〖復旧事例〗WD60EZRZ / 6TB|ヘッド異音を伴うスクラッチ障害からのデータ復旧
概要
今回ご相談いただいたのは、Western Digital 製 HDD「WD60EZRZ(6TB)」です。
通電すると明らかなヘッド異音が発生し、正常な動作が行えない状態とのことでお預かりしました。
異音が出ている状態のHDDは、内部で物理的な接触が起きている可能性が高く、
通電を続けることで障害が急速に悪化するケースも少なくありません。
本件では、早い段階で通電を止めて持ち込まれたことが、その後の復旧結果に大きく影響しました。
ご相談時の症状
お客様からは、次のような症状についてご相談をいただきました。
- 電源を入れるとカチカチとした異音が発生する
- PCや外付けケースに接続しても正常に認識されない
- 動作中に落下させてしまい、突然アクセス不能になった
このような落下が原因の異音が確認できる場合、ヘッド破損し、
プラッター表面に接触している可能性が考えられます。
そのため、この段階では通電テストを行わず、内部確認を優先しました。
外観確認と内部確認の判断
まずはHDD本体の外観を確認しましたが、筐体の変形や落下痕、
基板の焼損など、外側から明確に分かる異常は見られませんでした。
外観に問題がない場合でも、ご申告内容と異音の状態から内部障害が疑われるため、
記録面の状態を直接確認する必要があります。
そこで、内部の状態を確認する工程へ進みました。
下の写真は、今回お預かりした WD60EZRZ の外観です。

外観上は問題が見られなかったため、内部で発生しているトラブルの有無を確認するため、
開封して詳細な状態確認を行いました。
内部構造とプラッターの状態確認
次の写真は、HDD内部を開封し、プラッターとヘッド周辺を確認した際の様子です。
ヘッド異音が出ているケースでは、まず記録面の状態を慎重に観察します。

プラッター表面をさらに詳しく確認したところ、
一部の範囲で光の反射が乱れている箇所が確認できました。
これは、ヘッドが接触したことで発生する典型的なスクラッチの兆候です。
スクラッチ障害の確認
下の写真は、プラッター表面を拡大して撮影したものです。
記録面にの縁に同心円状の深い傷が確認でき、スクラッチ障害が発生していることが分かります。

スクラッチ障害は、データが記録されている磁性層そのものが損傷している状態です。
この状態で無理に通電や読み取りを続けると、傷が広がり、
復旧できる範囲が急速に狭まってしまいます。
作業方針とデータ抽出
今回のWD60EZRZでは、スクラッチが確認された範囲と、
比較的状態が安定している範囲が混在していました。
そのため、損傷範囲を避けつつ、読み出し可能な領域を選別する方針で作業を進めました。
ヘッド及びプラッターの保護を最優先とし、バイパス処置の的確な実施、読み取り条件を細かく調整しながら、
無理な連続アクセスを避けてデータ抽出を行いました。
下の写真は、作業中に確認したプラッターの状態です。

復旧結果
スクラッチが発生している領域については読み取りが困難でしたが、
スクラッチがない領域を中心にデータ抽出を行い、
お客様が必要としていたデータの多くを復旧することができました。
スクラッチ障害は重度の物理障害に分類されますが、
初期対応と作業方針次第で、復旧できる結果には大きな差が生じます。
今回は早期に通電を止めてご相談いただいたことが、結果につながったケースでした。
技術者コメント
ヘッド異音が発生しているHDDは、内部で記録面との接触が起きている可能性が高く、
「一度だけなら大丈夫だろう」と通電を続けることが、
復旧率を大きく下げてしまう原因になります。
異音・認識不良・動作不安定といった症状が出た場合は、
できるだけ早く電源を切り、状態を悪化させないことが重要です。
秋葉原データ復旧スクラッチラボでは、
スクラッチ障害を含む重度物理障害の案件にも対応しています。
同様の症状でお困りの際は、一度ご相談ください。



