〖復旧事例〗BUFFALO HD-EDS4U3-BE(ST4000VM005)|基板故障によりスピンアップしない状態からのデータ復旧
概要
今回ご相談いただいた BUFFALO HD-EDS4U3-BE(内蔵ドライブ:ST4000VM005)は、
電源投入してもスピンアップが始まらず、全く動作しない状態でした。
他社では復旧不可と案内されていた案件で、原因は基板(PCB)上の重度物理障害でした。
基板故障は、電源管理ICや制御チップのダメージが原因で発生し、軽度の故障と異なり
単純な基板交換だけでは動作復旧しないケースがあります。
本件も ROM移植のみでは改善しないタイプで、基板上の部品交換と再実装が必要でした。
まず、本体外観として以下が対象HDDの外観です。

基板故障の状態確認
スピンアップできない状態が続いていたため、基板の通電状態と部品の動作確認を行いました。
結果、モーターコントローラー周辺の回路に異常があり、基板上で電源が正常に分配されていない状態でした。
次の写真は、故障していた基板上のモーターコントローラー付近です。(すでにモーターコントローラーを取り外した後の写真です)

モーターコントローラー周辺には、電源ラインの保護部品やインダクターが隣接しており、
これらの損傷によりスピンアップ信号が正しく処理されず、HDD本体がまったく動作できない状態でした。
基板修理(コンポーネント交換)
本件は基板交換だけでは動作しないため、故障していた部品単位での修復作業が必要でした。
モーターコントローラーはドナー基板から取り外し、リボール処理を行い、
正常な状態で基板に再実装する工程を行いました。
下の写真は修理途中の基板作業の様子です。

また、モーターコントローラーと隣接するインダクターも損傷が見られたため、
こちらも正常なドナー部品と交換し、基板全体の電源制御が安定するよう再構築しました。
動作復旧後の制御確認
基板修理後、再度通電テストを行い、スピンアップが正常に開始されることを確認しました。
こちらは修理後の基板動作確認中の拡大写真です。

動作が安定したため、専用装置で内部ドライブを制御し、データ抽出(読み取り作業)を実施しました。
障害の進行も軽度で、読み取り面に問題はなく、必要な領域をほぼ取得できました。
復旧結果
基板障害が原因でスピンアップできなかった ST4000VM005 ですが、
基板修理とモーターコントローラーの再実装により起動に成功し、
重要データを中心に復旧することができました。
基板が完全に故障している場合、通電を繰り返すと部品焼損が進み、
復旧不能になるケースもあるため、早めのご相談が重要です。
技術者コメント
ST4000VM005 は基板トラブルが起きやすいモデルのひとつで、
従来の「基板交換+ROM移植」だけでは復旧できない案件も多く見られます。
本件のようにコンポーネント単位の修理が必要なケースでは、
適切な設備と手順を踏むことで復旧可能な状態へ戻せることがあります。
スピンアップしない、通電しても無反応、焦げたにおいがするなどの症状がある場合は、
それ以上の通電テストを行わず、できるだけ早めにご相談ください。



