〖復旧事例〗Seagate ST4000DM005|スクラッチ障害で他社復旧不可となったHDDからのデータ復旧
概要
今回対応したのは、Seagate製 4TB HDD「ST4000DM005」です。
電源投入後すぐに異音が発生し、数秒でスピンドルが停止する症状でご相談をいただきました。
他社では復旧不可と判断されていましたが、内部診断を行った結果、
ヘッド損傷とスクラッチ障害が同時に発生している状態であることを確認しました。

症状
電源投入後は回転音と異音が発生し、約5秒でスピンドルが停止する状態でした。
通電を繰り返すと損傷が拡大する可能性があるため、診断段階で通電を停止し、内部確認へ進みました。
内部診断で確認できた障害
内部を開封して詳細に確認した結果、以下の損傷が見られました。
1. ランプ部(ヘッド退避パーツ)の亀裂
下から3番目のヘッドに対応する箇所のランプに亀裂があり、
ヘッドの動作が阻害されていた可能性が高い状態でした。
この位置に亀裂が発生するケースは比較的多く、負荷がかかりやすい構造であると考えられます。

2. ヘッド先端の変形
同じく下から3番目のヘッド先端が曲がっており、
正常な動作ができず、プラッターへ余計な負荷がかかっていたと推測されます。

3. S2 面に広がるスクラッチ傷
下から3番目の記録面(S2 面)には、全面にリング状のスクラッチ傷が確認されました。
損傷したヘッド先端が繰り返し同じ位置を通過し、磁性体が削れ続けた結果と判断できます。

プラッター上のスクラッチ傷を確認できる内部動画
スクラッチ傷は磁性体が削れた状態であるため、ヘッドが通過すると読み取り不能になるほか、
他の面へ損傷が拡大するリスクもあります。
作業内容
1. 損傷ヘッド系の処置と読取環境の確保
変形したヘッド先端と亀裂のあるランプの状態を踏まえ、
ヘッドがスクラッチ部分へ触れないよう調整を行いました。
必要に応じてヘッド交換を実施し、読み取りに使用できる系統のみが動作する構成へと整えました。
2. スクラッチ領域の回避制御
傷の範囲を特定し、該当箇所を読み取り対象から除外する設定を行いました。
そのうえで、損傷が少ないエリアから優先して読み取りを進めました。
3. 読み取り可能なセクタの確保と解析
ファームウェアを調整後、不良箇所を避けながら読み取り可能なセクタを確保し、
専用ツールでファイル構造を解析しました。
復旧結果
S2 面の全面的な損傷により、HDD全域の再構築は不可能でしたが、
損傷の影響を受けていない領域から重要データの抽出に成功しました。
一般的には復旧不可と判断されやすい障害でしたが、損傷箇所を適切に切り分け、それぞれに対処することで
データを確保することができました。
技術者コメント
異音と回転停止が同時に発生する場合、ヘッド損傷やスクラッチ障害が疑われます。
通電を続けるほど損傷が拡大し、復旧可能な範囲が狭まるため、
異常を感じた時点で電源を切って相談いただくことが最も安全です。
今回のようにランプの亀裂やヘッド先端の変形が原因で、
特定の面へ大きな削れが発生するケースは少なくありません。
秋葉原データ復旧スクラッチラボでは、
スクラッチ障害や他社で復旧不可とされたHDDにも対応しています。
重度物理障害と判断される場合でも、一度ご相談ください。



